2013年04月09日

第14回 日本人にしか理解できないグラフ ― 浸透圧・細胞体積相関

 浸透圧と言うのは高校生物において重要な単元です。細胞の物質の浸透のところで詳しく学習しますが、それ以外にも、動物の恒常性や植物の反応のところで登場します。
 濃い溶液(高張液)に細胞を浸すと、細胞内と細胞外の浸透圧を等しくさせようと細胞内の水が出ていき、細胞が縮みます。細胞内液と等しい濃度の溶液(等張液)に浸した場合は、流入量と流出量が釣り合い、見かけ上は水の移動がなくなります。細胞内液よりも薄い溶液(低張液)に浸すと細胞の中へと水が入ってくるため、細胞の体積が増えます。植物の場合、細胞は硬い細胞壁に囲まれているため体積が増加できない分、細胞壁を押す力(膨圧)が生じます。
 教科書や参考書の初めの方に載っている内容です。細胞学の基礎であり、高校生物の範囲ではそれほど難しくない内容なのですが、ここでつまずいてしまう生徒がかなり多いようです。ただ、内容が難しくて理解できないのではなく、どうも誤解しているようなのです。その原因の一つに、細胞の浸透圧と細胞の体積の相関を表すグラフの分かり難さ、があるのではないでしょうか。
 浸透圧の説明に使われるグラフ(細胞の体積と圧力の相関図)がとても分かりにくいのですよ。小生も、少なくとも高校の頃は正しく理解していませんでした。生物学の講師となった今でも、この図は苦手です。生徒に誤解させず、正しく理解させるのはかなり難しい。大学の生物学実験実習で、タマネギの表皮を使った浸透圧の実験で細胞の反応を説明するのですが、このグラフは使わずに解説しています。

 細胞の浸透圧に関する実験では、様々な濃度の溶液を準備して、これに細胞(組織片)を漬けて反応を観察する、というのが一般的だと思います。その観察結果をグラフにするには、実験における可変要素である細胞外液の濃度または浸透圧を縦軸か横軸に取り、その時の細胞の大きさをプロットする、というのが極めて簡潔で分かりやすいでしょう。しかし、それでは細胞の吸水力や膨圧といったものまで示すことができない。高校生に解説するための図としては情報量が少なく、単純すぎる。そのため、昔の偉い先生が、我々がよく目にするこのグラフを考案したのだと思います。
第14回図.jpg
 この図は啓林館さんのサイト(1)の図を模倣して作ったものです。
 理想的な植物細胞の体積と細胞内液の浸透圧および膨圧の関係を表しており、同時に、細胞内液の浸透圧と膨圧の差から、吸水力までも見事に表しています。しかし、この図は分かり難い。
 なぜかと言うと、この図に示されている浸透圧は細胞内液の浸透圧だからです。細胞内の浸透圧は外液の浸透圧を変えることによって調節できますが、簡単に望みどおりの値を作ることはできません。そのために、このグラフがどういう状況を表しているのかが直感的に分かりにくいのです。一方、細胞外液の浸透圧は人為的操作により容易に変化させることのできる要素です。この要素がグラフのどこかに示されているだろうという思い込みが誤解を生じさせているのです。

 この図で、横軸が100のところが限界原形質分離の状態にあたります。よって、100のところは等張液に浸した状態、100以下の部分は高張液に浸されて原形質分離を起こした状態、100以上の部分は低張液につけて膨圧の生じた状態、と思ってしまいがちです。しかし、これが間違いなんですよ。
 図の脚部にあるように、これは蒸留水に浸した場合限定の図なのです。様々な溶質濃度の溶液を使って実測した結果を表したものではないのです。
 例えば、横軸が100のところ、つまり限界原形質分離の状態のところを見てください。等張液に浸した状態ならば、水の出入りは平衡に達しているので吸水力は0のはずです。しかし、この図では、かなり大きな吸水力を持っていると表されています。これは、限界原形質分離の状態の細胞が蒸留水中にあった場合、まだまだ細胞内に水が入ろうとしている、つまり吸水力があるという状態を表しているのです。
 啓林館のサイトの図では、「蒸留水に浸した場合」と説明が加えられており、いたって適切です。現行の教科書や参考書の多くでは、「細胞を蒸留水に浸すと・・・」という書き出しで始まる文章が載せられていますが、「蒸留水限定」といった分かりやすい断わり書きのあるものは少ないように思います。
 それどころか、「植物細胞を様々な濃度の溶液に浸したときの細胞の体積と浸透圧の関係を示したもの」と受け取れるようなものもあります。『サイエンスビュー生物総合資料』(実教出版、2009年発行)では、「ユキノシタの葉の表皮細胞を様々な濃度のスクロース溶液に浸す」という説明と共に、30%スクロース溶液中、7%スクロース溶液中、3%スクロース溶液中、蒸留水中のユキノシタの表皮細胞の写真が載っています。その下では、それぞれの細胞と細胞壁の状態がイラストによって説明されています。そして、例のグラフのある点を矢印で指している。添付した図でいうと、原形質分離の状態(横軸90付近)、限界原形質分離の状態(100のところ)、膨圧を生じた緊張状態(110〜120の辺り)、細胞の浸透圧と膨圧がつりあって吸水力が0になった状態(125付近)、のところです。これでは、誤解を生じてむべなるかな、と感じます。

 さて、繰り返し言いますが、教科書や参考書でよく目にするこの図は、蒸留水に浸した場合のみに適用できるグラフなのです。しかし、これが蒸留水に浸した場合だとすると、あと2つややこしい点があります。
 まず一つ目は、横軸が100以下の部分は、蒸留水(低張液)に浸して原形質分離を起こしているとは、いったいどーゆーこと?ナイーブな感覚の持ち主ならば、大いに戸惑うでしょう。そこで、もう一言説明を加えて、グラフの見方を修正してあげなければなりません。つまり、高張液に浸して原形質分離した細胞を純水に移した場合、細胞の体積と細胞内液の浸透圧および膨圧はグラフの左側から右側へと変化しますよ、というようにグラフを見れば良いのです。やや硬い表現をするならば、任意の細胞を蒸留水に移した時、どのくらい吸水力を持つか、を示している図だと考えれば良いのです。実際、この様に説明している参考書もありますが、多くの参考書では説明が不足していると感じます。
 もう一つは、横軸が100以上の部分、細胞壁に押し返されて膨圧を生じているのに、体積が増え続けているのは、どーゆーこと?まあ、これは揚げ足取りのような疑問ですが、感覚的に違和感を覚えてしまうのだ。では、どうすればよいか。これは、現実の細胞ではなく仮想細胞における理論的なモデルなんだと割り切ってしまうしかない。細胞壁が無ければこのように体積が増えますよ、その時実際には細胞壁によって膨圧が増加しますよ、と見るのが適当なんだけど・・・

 さらに、この図に関してもう一点、述べておかねばならないことがあります。細胞の吸水力について、
(細胞内液の浸透圧)−(膨圧)=(吸水力)・・・@
という式が、教科書や参考書に必ず書かれており、有無を言わさず覚えさせられています。しかし、これも「細胞外液が蒸留水の場合限定」なのです。細胞の吸水力は、正しくは
(吸水力)=(細胞内外の浸透圧差)−膨圧
     ={(細胞内液の浸透圧)−(細胞外液の浸透圧)}−(膨圧)・・・A
と表されます。細胞外液が蒸留水の場合、浸透圧が0 atmなので@の式になるのです。
 @の式は入試対策において重要事項であり、参考書では赤字やゴシック体で強調されている場合が多いのですが、この式が当てはまるのも「蒸留水限定」と明記しているものはほとんどありません。

 では、ここで少し見方を変えてみましょう。この図は蒸留水に浸した場合にしか適用できないと述べてきましたが、実は「吸水力」という言葉を除けば、蒸留水に限定する必要はないのです。細胞内液の浸透圧と膨圧の関係だけならば、任意の浸透圧を持つ細胞外液に浸した場合についてこのグラフが適用できます。例えば、ある細胞が吸水して体積が増えれば、細胞内は濃度が薄くなって浸透圧が下がります。両者の関係は、外液が低張液でも等張液でも高張液でも成り立ちます。さらに、体積が一定の値以上になると、細胞壁を押す膨圧が生じる。ここで、
(細胞内液の浸透圧)−(膨圧)=(細胞外液の浸透圧)・・・B
が成り立つのです。つまり、この図の「吸水力」を「細胞外液の浸透圧」に書き換えれば、俄然理解しやすくなるのです。少なくとも、小生には理解しやすいと同時に、教えやすい。
 任意の浸透圧を持つ細胞外液に植物細胞を浸した場合に、見かけ上の水の出入りがない平衡状態となった時にBの式が成り立っているのです。膨圧を生じていないところ(膨圧=0 atm)、つまり原形質分離を起こしている状態では、(細胞内液の浸透圧)=(細胞外液の浸透圧)が成り立っています(ただし、細胞外液が濃すぎる場合、やがて細胞内液の濃度上昇が限界を迎えて破綻する)。
 図の形は全く同じですが、「吸水力」を「外液の浸透圧」に変える、ただそれだけの違いで図が示す内容が大きく変わってしまいました。「吸水力」を表す場合は、この後どのくらい水を吸収できるか、という未来を予測しているわけですが、「外液の浸透圧」を表す場合は、平衡になった結果、つまり現在を表しています。高校生に浸透圧、膨圧、細胞の体積の関係を学習させるためには、後者の方が断然適していると感じます。横軸の任意の点を取れば、その条件での平衡状態が表されているので、感覚的にも馴染みやすいでしょう。図から細胞外液の浸透圧も読み取れるので、このくらいの浸透圧の溶液に細胞を漬けると、内液の浸透圧がこのくらいで細胞の大きさがこのようになる、という風に図を見ることも可能です。

 以上のように、細胞の浸透圧と細胞の体積の相関を表すこの図はいくつかの問題をはらんでいるのです。細胞の吸水力を無理に説明しようとしているために、本来理解しやすくするためのグラフが、かえって理解し難いものになっているように思います。同じことを感じている先生方は多いようで、予備校の有名講師が執筆した参考書を見ると、様々な工夫が感じられます。
 『大学入試完全網羅生物I・IIのすべて』(中経出版、2011年発行)には、細胞の浸透圧と膨圧の差を「外液の浸透圧」と表した、つまりBの式に則った図を載せています。『生物Tの点数が面白いほど取れる本』(大堀求著、2011年発行)には、誤解を生じないようにあえてこのグラフを載せず、その代り平易な言葉で丁寧に解説しています。また、高校の教員で、高校生物の内容や授業についての解説や論説をネットで公開しておられる池田博明先生は、このグラフを「教える必要がない」と判断している、と述べておられます。(2)

 ところで、この浸透圧と細胞体積の相関図は日本だけでしか使われていないらしい。(2) ためしに、「浸透圧、グラフ」と日本語で画像検索するとお馴染みのグラフが多数ヒットしてきましたが、「osmotic pressure, graph」で検索すると、このグラフを載せている英語のサイトは全く見当たらないのです。欧米の教育法が絶対に正しいわけではなく、日本独自の教え方があっても良いと思いますが、このグラフについては少し見直してもらいたいですね。

(1) 啓林館 生物I 改訂版>第1部 生物体の構造と機能>第2章 細胞の機能>第1節 細胞膜と物質の出入り

(2) 高校生物 浸透圧と膨圧曲線の授業 池田博明


後記
 2010年度の川崎医療福祉大の入試問題に、浸透圧と細胞の体積の相関図が出されています。その図を、「ある植物細胞を高張のスクロース溶液や蒸留水に浸した場合の、原形質の体積と圧力の関係を示したグラフ」と説明し、問1では「細胞の浸透圧」と「膨圧」の差が「吸水力」というのが正解となっています。明らかな出題ミスです。
 「ある植物細胞を高張のスクロース溶液に浸した後、蒸留水に浸した場合の・・・」だったら良かったのにね・・・

ラベル:浸透圧
posted by Mayor Of Simpleton at 10:34| Comment(11) | 高校生物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
吸水力の定義は

@でもAでも,それぞれまったく不整合はないと思います。
@では,細胞単独の潜在的な引力であると
定義されていると理解できます。


Posted by at 2014年07月08日 11:39
コメントをありがとうございます。

@の式があらゆる溶液について当てはまるとしたら、等張液に浸しても細胞は吸水し続けることになります。
細胞内液の浸透圧を仮に7.5気圧とします。等張液に浸した状態なので膨圧は0気圧です。
(細胞内液の浸透圧)−(膨圧)=(吸水力)・・・@にあてはめると、7.5−0=7.5気圧の吸水力を持つことになってしまいます。

「細胞単独の潜在的な引力」とはどういうものか分かりかねます。的外れな回答になっていたとしたらご容赦ください。
Posted by Mayor of simpleton at 2014年07月09日 02:39
私は溶液の濃度の調整は水ではなくて溶媒の量で調整するという固定観念がなかなか取れなくて、水の移動で浸透圧が変化するということがいつもわからなくなってしまいます。むくみを調べていたらここにたどり着きました。
Posted by at 2014年11月16日 09:35
私は溶液の濃度の調整は水ではなくて溶媒の量で調整するという固定観念がなかなか取れなくて、水の移動で浸透圧が変化するということがいつもわからなくなってしまいます。むくみを調べていたらここにたどり着きました。
Posted by マジシャン at 2014年11月16日 09:36
吸水力について誤解があるように思います。水の出入りがない平衡状態では吸水力=0とお考えのようですが、実際には水分子は常に運動しており、低張液に浸され、平衡に達した状態でも、外液の浸透圧によって、水分子は外に引き出されています。その運動と(細胞の浸透圧ー膨圧)の力によって水分子が内に引き込まれる運動が相殺されて平衡に達しています。吸水力とは外液の浸透圧に対し、水分子を内向きに動かしている力で、この力を具体的に顕在化しようとするなら、溶液に浸してある細胞を蒸留水に浸し、その時水分子が運動する力ということになります。すなわち、吸水力は平衡状態では外液の浸透圧に等しいということになります。
Posted by フジモト マサヒロ at 2015年01月08日 00:21
体積が115から125と1割弱増えると、
細胞の浸透圧も1割弱減少するのが正しいかと思われますが、
上図の数値を読み取って計算例とします。
細胞内液の浸透圧≧細胞外液の浸透圧の領域に限ります。


1.蒸留水に浸して体積を計測した場合

1a.平衡に至らない体積115の時点で考えると
(吸水力)4.3 ={(細胞内液の浸透圧)5.8 −(細胞外液の浸透圧)0.0 }−(膨圧)1.5
の力で吸水して、体積125の平衡点まで体積が膨張していきます。

1b.体積125の平衡点では
(吸水力)0.0 ={(細胞内液の浸透圧)5.6 −(細胞外液の浸透圧)0.0 }−(膨圧)5.6


2.一定の濃度のスクロース溶液に浸して体積を計測した場合

上図の浸透圧の目盛り「0」を、スクロース溶液の浸透圧の数字と書き換えます。
体積115の「浸透圧」を「細胞内液と細胞外液の浸透圧差」と書き換えます。

例として浸透圧1.0のスクロース溶液として、
上図の浸透圧の目盛り「0」を「1」と書き換えます。

2a.平衡に至らない体積115の時点で考えると
(吸水力)4.3 ={(細胞内液の浸透圧)5.8 −(細胞外液の浸透圧)1.0 }−(膨圧)0.5
の力で吸水して、体積125の平衡点まで体積が膨張していきます。

2b.体積125の平衡点では
(吸水力)0.0 ={(細胞内液の浸透圧)5.6 −(細胞外液の浸透圧)1.0 }−(膨圧)4.6


3.様々な濃度のスクロース溶液に浸して体積を計測した場合

体積が増えつつある時点の体積を計測しているのではなく、
体積の増加が止まった平衡点の計測となるので、
吸水力は0となります。

このグラフでは、上図の体積115の点の、「吸水力」を「細胞外液の浸透圧」、
「浸透圧」を「細胞内液の浸透圧」と書き換えます。

3a.平衡している体積115の時点で考えると
(吸水力)0.0 ={(細胞内液の浸透圧)5.8 −(細胞外液の浸透圧)4.3 }−(膨圧)1.5

3b.平衡している蒸留水で考えると
(吸水力)0.0 ={(細胞内液の浸透圧)5.6 −(細胞外液の浸透圧)0 }−(膨圧)5.6
と、グラフの体積125に位置します。


以上のように考えました。
Posted by 小林 泰典 at 2015年01月08日 06:15
2015年01月08日 06:15の続き

2.では、
「膨圧」のグラフは、圧力0から立ち上がり、
「細胞内液の浸透圧」と交わることがなく、
平衡点において、(細胞内液の浸透圧)−(細胞外液の浸透圧)の位置になります。
3.でプロットされているのはこの点になります。

あるいは、上図のような交わる図にするためには
「膨圧+細胞外液の浸透圧」のグラフにする必要があります。

以上のように考えました。
Posted by 小林 泰典 at 2015年01月08日 13:48
書き直しました。

体積が115から125と1割弱増えると、
細胞の浸透圧も1割弱減少するのが正しいかと思われますが、
上図の数値を読み取って計算例とします。
細胞内液の浸透圧≧細胞外液の浸透圧の領域に限ります。


1. 蒸留水に浸して体積を計測した場合

1a. 平衡に至らない体積115の時点で考えると
(吸水力)4.3 ={(細胞内液の浸透圧)5.8 −(細胞外液の浸透圧)0.0 }−(膨圧)1.5
の圧力で吸水して、体積125の平衡点まで体積が膨張していきます。

1b. 体積125の平衡点では
(吸水力)0.0 ={(細胞内液の浸透圧)5.6 −(細胞外液の浸透圧)0.0 }−(膨圧)5.6


2. 一定の濃度のスクロース溶液に浸して体積を計測した場合

2a. 「細胞外液の浸透圧」と「膨圧」のグラフが交わる場合

(吸水力)={(細胞内液の浸透圧)−(細胞外液の浸透圧)}−(膨圧)
は、
(吸水力)=(細胞内液と細胞外液の浸透圧差)−(膨圧)
あるいは
(吸水力)=(細胞内液の浸透圧)−(細胞外液の浸透圧+膨圧)
と変形できます。

上図の圧力の目盛り「0」を、細胞外液の浸透圧の数字と書き換えます。
つまり、水平に細胞外液の浸透圧のグラフが描かれます。
元の(膨圧)のグラフは、(細胞外液の浸透圧+膨圧)の数値のグラフとなります。
体積115の位置に書かれた「浸透圧」を「細胞内液と細胞外液の浸透圧差」と書き換えます。
「細胞内液と細胞外液の浸透圧差」「膨圧」ともに、細胞外液の浸透圧線との差の値です。

例として浸透圧1.0のスクロース溶液として、
上図の圧力の目盛り「0」を「1」と書き換えます。

2aa. 平衡に至らない体積115の時点で考えると
(吸水力)4.3 ={(細胞内液の浸透圧)5.8 −{(細胞外液の浸透圧+膨圧)1.5 }
と読み取り、変形して
(吸水力)4.3 ={(細胞内液の浸透圧)5.8 −(細胞外液の浸透圧)1.0 }−(膨圧)0.5
の圧力で吸水して、体積125の平衡点まで体積が膨張していきます。

2ab. 体積125の平衡点では
(吸水力)0.0 ={(細胞内液の浸透圧)5.6 −{(細胞外液の浸透圧+膨圧)5.6 }
と読み取り、変形して
(吸水力)0.0 ={(細胞内液の浸透圧)5.6 −(細胞外液の浸透圧)1.0 }−(膨圧)4.6


2b. 「細胞外液の浸透圧」と「膨圧」のグラフが交わらない場合

上記2a.の書き換えをせず、「膨圧」のグラフだけを描き直すと、
「膨圧」のグラフは、体積100圧力0から立ち上がり、
「細胞内液の浸透圧」と交わることがなく、
体積125の平衡点において、(細胞内液の浸透圧)−(細胞外液の浸透圧)の位置になります。
下記3.でプロットされているのはこの点になります。
上記1.の蒸留水は、この2b.のグラフにおいて、細胞外液の浸透圧が0の場合といえます。

2ba. 平衡に至らない体積115の時点で考えると
(吸水力)4.3 ={(細胞内液の浸透圧)5.8 −(細胞外液の浸透圧)1.0 }−(膨圧)0.5
の圧力で吸水して、体積125の平衡点まで体積が膨張していきます。

2bb. 体積125の平衡点では
(吸水力)0.0 ={(細胞内液の浸透圧)5.6 −(細胞外液の浸透圧)1.0 }−(膨圧)4.6


3. 様々な濃度のスクロース溶液に浸して体積を計測した場合

体積が増えつつある時点の体積を計測しているのではなく、
体積の増加が止まった平衡点の計測となるので、
吸水力は0となります。

(吸水力)={(細胞内液の浸透圧)−(細胞外液の浸透圧)}−(膨圧)
代入して
0 ={(細胞内液の浸透圧)−(細胞外液の浸透圧)}−(膨圧)
変形して
(細胞外液の浸透圧)= (細胞内液の浸透圧)−(膨圧)
となります

このグラフでは、上図の体積115の点の、「吸水力」を「細胞外液の浸透圧」、
「浸透圧」を「細胞内液の浸透圧」と書き換えます。

3a. 平衡している体積115の時点で考えると
(吸水力)0.0 ={(細胞内液の浸透圧)5.8 −(細胞外液の浸透圧)4.3 }−(膨圧)1.5

3b. 平衡している蒸留水で考えると
(吸水力)0.0 ={(細胞内液の浸透圧)5.6 −(細胞外液の浸透圧)0 }−(膨圧)5.6
と、グラフの体積125に位置します。


以上のように考えました。
Posted by 小林 泰典 at 2015年01月08日 15:33
フジモト マサヒロ様
コメントをありがとうございます。平衡状態にあっても細胞の内外へ水の移動があることは重々承知しております。高校生物で吸水力と言った場合、現在では、「細胞が実際に水を引き込む圧力」を言います。北海道教育大学旭川校理科教育教室のHP(http://www.asa.hokkyodai.ac.jp/research/staff/andoh/cytoplasmic.html)の文章を引用すると、
「2001年以前の教科書では,吸水力=(細胞内の)浸透圧−膨圧=外液の浸透圧 という定義であった。しかし,2001年の学習指導要領改訂の際に,吸水力=(細胞内の)浸透圧−膨圧−外液の浸透圧 というように文科省の定義が改められたので注意が必要である。」
 OKWaveに分かりやすい説明があります(http://okwave.jp/qa/q6011297.html
Posted by Mayor of simpleton at 2015年01月09日 02:18
小林 泰典様
コメントをありがとうございます。
すみません、後日、コメントをお返しいたします。
Posted by Mayor of simpleton at 2015年01月09日 02:20
水ポテンシャルの学習を避けて、安易に水ポテンシャルにマイナスの符号をつけたものを「吸水力」としたため、かえって理解が難解になっているのでは。2001年以降は、細胞内外の水ポテンシャル“差”になったようですね。
Posted by 名無し at 2015年05月13日 17:59
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